様々な思考方法を学んだにも関わらず、中々知的生産ができないとお悩みの方は多いのではないだろうか?
本書はそんな方たちのために書かれた知的生産術の本です。
著者は20代を広告代理店で、30代を外資系のコンサルティングファームで過ごし、30代半ば以降はビジネススクールのファカルティという立場で「知的生産術の技術」を指導してきた人物。
著者は知的生産は「情報をどう集めるか」とか「集めた情報をどう処理するか」といった「行動の技術」、いわゆる「心得」によってこそ大きく左右されると語ります。
そこで本書は、前半部分で知的生産の
- 戦略
- インプット
- プロセッシング
- アウトプット
のそれぞれのステップにおいて必要となる行動や心がけ、つまり「心得」について説明し、
後半部分で、いかに知的ストックを厚くするかについて教えてくれます。
では、各パートで印象に残った部分を紹介しましょう。
1.知的生産の戦略
知的生産においては「顧客がすでに持っている知識との差別化」が一番大きな問題になります。
知的成果の受け手が、何をどこまで知っているかを理解した上で、どうやって「新しい付加価値」を生み出すかを考える
この戦略においては、まず相手を意識するということを述べています。それを理解する上で差別化するポイントが何かを考えることが戦略になります。
2.インプット
縦軸は「紙」と「声」。そして横軸は「社内」と「社外」。こうするとそれぞれの象限から「社内資料」「公開資料」「社内の関係者インタビュー」「社外の関係者インタビュー」という四つの情報ソースが浮かび上がる
情報収集に際してはさまざまな基本ルールはあるものの、まずはフットワーク軽く動いてスジのよい情報を沢山集めるということを心がけてください。
ある領域についての書籍を三〜五冊程度読めば、その分野に関する読書の限界効用は急激に低下し、十冊も読めば、それ以上の読書が与えてくれる限界効用はほとんどなくなります。
この3つの引用からは情報源をマトリックスで考える、現地現物のよい情報を集めることが大事。ただし、現地見物にならないようにとも警告をしめしています。また、その道の専門家になるのでなければ、ある分野についての勉強はマックス5冊で十分と言っています。
3.プロセッシング
そもそも「プロセッシング」とは、何をやることなのでしょうか? 一言でいえば、「集めた情報を分けたり、組み合わせたりして、示唆や洞察を引き出す」ことです。
エースと呼ばれる人は必ず、まず紙に自分の思考を落とす、ということをしていました。思考を深めようと思ったら、まずとにかく紙に書き出してみる、自分のアタマの中の情報や思考を、アタマの外に出して相対化してみるということが重要です。
思考停止ワードというのは、議論や考察のプロセスにおいて、思考を深めることを止めてしまうような流行のキーワードのことを指しています。代表的なものに「グローバル化」や「イノベーション」といった用語が挙げられます。
考えることを進める上では、紙に書き出す、人に話す、そして、IT業界ではよく使われますが、バズワードを使わないと言うことですね。やはり紙に書き出すのは頭を整理する上で有効ですし、話すことで人の頭をつかって思考を進めることができます。
4.アウトプット
アウトプットの心得として、最初に皆さんにお伝えしておきたいのが「レス・イズ・モア=少ないほどいい」という価値観です。なぜ「少ないほどいい」のでしょうか? 一言で答えれば「効率がいいから」です。
アウトプットがWhat、Why、Howの三つの要素を備えているかを意識してみましょう。
アウトプットについては、人を動かすためにはどうするかという視点で書かれています。3つの備える要素だけでなく、アイディアについて「共感」×「面白い」と反応してもらえるかどうか?相手側の視点にたってアウトプットを考えることも重要です。
5.知的ストックを厚くする
十四カテゴリーについては主要文献に目を通しておいてもいいかなと思います。 経営戦略/マーケティング/財務・会計/組織/リーダーシップ/意思決定/経営全般/経済学/心理学/歴史/哲学/宗教/自然科学/芸術。これらの十四カテゴリーについて、三〜五冊程度、定番といわれる概説書や教科書に目を通しておけば、一般的な文脈での知的生産に十分なレベルの知的ストックは構築できると思います。
効率的に分厚い知的ストックを作るためには、自分なりの好奇心やテーマを設定して、本と本を数珠でつないでいくようなイメージ、しりとりをやっていくようなイメージでインプットする。そして、インプットされた情報が、他のどの情報とつながっているかをイメージしてみることで、効率的に知的ストックを厚くすることができます。
なお著者は知的ストクックのことをイケスと呼んでいます。
本を読んでいて、気になるところには必ずアンダーラインを引きます。本を汚すのが嫌だという人がいますが、アンダーラインを引くという行為を抜きにしたら、イケスの構築は絶対にできません。(中略)アンダーラインを引きつつ一冊の本を読了したら、アンダーラインを引いた箇所のうち、どこをイケスに放り込むかを選別します。ここでポイントになるのが、優先順位付けによる選抜です。アンダーラインの箇所がどんなに多かったとしても、イケスに放り込むのは九つまで、としてください。
著者は洞察のスピードと精度をあげるためには、知的ストックを厚くすることが重要だといっており、本書においてこの章がもっとも重要だと私は感じました。
実際の知的生産のためにプロセス毎の心得とその前提となる材料の貯め方。
知的生産力をあげたいと思う方にはお勧めの一冊でした。
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