大震災の後で人生について語るということ by 橘 玲

今まで大丈夫だと思っていたものが、ある日突然安全ではなくなりリスクとなる。
「ありえないこと」「起こりえないこと」を西欧の人たちはブラックスワンを探すようなものといっていた。
今回の大震災も原発の事故も日本人にとってはブラックスワンと著者は語る。
ひとたび黒い鳥が現れると世界の姿は一瞬にして変わってしまう。
我々は1997年にも黒い鳥と出会っている。
タイバーツ暴落をきっかけとした通貨危機。
日本にも飛び火し、拓銀や山一証券の経営破綻につながった。
その翌年日本では自殺率が大きく跳ね上がる。
なぜ自殺率があがるのか?それは経済リスクの大きさが影響している。
今回の震災でも多くの人が大きな経済リスクを抱えている。
日本人の人生設計を変えた四つの神話
不動産神話 持家は賃貸より得だ
マイホームはあなたという家主があなたという賃借人から家賃を受け取っているということになる。
マイホームとは不動産投資であり、金融資産そのもの
持家と賃貸の違いは不動産投資のリスクを引き受けるかどうかにある。
賃貸より持家は得とされているのは持家はの方がリスクが高いから
会社神話 大きな会社に就職して定年まで勤める
サラリーマンになるということは、会社から毎月給料という配当を受け取り、退職金として元金が償還される債権を買うようなもの
サラリーマンの人生というのは、四十代までひたすら会社に貯金して、五十代から回収を始め、満額の退職金をもらってすべての帳尻が合うようにできている。
この十年で会社の倒産、大企業のリストラが珍しいことではなくなり、サラリーマンであることのリスクが顕在化してきた
円神話 日本人なら円資産を保有するのが安心だ
日本に住んでいる以上、私たちの資産は円に縛りつけられている
円安になれば石油など輸入商品の価格が上昇するので、日本人の生活は相対的に貧しくなる
私たちが真剣に考えなくてはならないのは、円資産が価値を失うリスク
国家神話 定年後は年金で暮らせばいい
私達の確実な未来は ①人口総数の減少 ②高齢化の進展 ③少子化の進展 の三つ
人口動態の変化によって確実に予想される未来は公的年金や医療・介護など社会保障の破綻
戦後の日本人の人生設計は以上四つの神話の上に築かれてきた。
戦後の経済成長に最適化した人生設計だったが、いったんリスクが顕在化すれば個人の人生にとてつもない災厄をもたらすことになる。
ポスト3.11の人生設計
伽藍からバザールへ

伽藍とは、ひとの集団が物理的・心理的な空間に閉じ込められている状態で外部から遮断された世界
バザールとは開かれた空間で、店を出すのも畳むのの自由
世界市場が一つになったことで、仕事は誰でもできる代替可能な仕事「マックジョブ」と「クリエイティブクラス」にわかれる。
クリエイティブクラスにも拡張可能なクリエイターと拡張不可能なスペシャリストがある。
アメリカの会社員は二割のスペシャリストと八割のバックオフィスで構成されている。
バックオフィオスの仕事は残業や休日出勤がなく、自分の仕事の範囲内でしか責任がないなど様々なメリットがある。
二十代や三十代のサラリーマンなら、転職や独立を意識しつつスペシャリストとして、競合他社や他の業種でも評価してもらえる実績をつくること。
四十代以上になると会社を離れたら独立するしかありません。
世界市場投資のすすめ
個人のリスクを国家の経済リスクから切り離せばいい
インフレへの対策としては、物価に直接連動するかたちで保険をかけてくのが最も確実
世界株投資は個人にとって最強の投資法
大震災の後で人生を語るということ
大震災と原発事故の悲惨な現実を目の前にしても、為政者も国民も変わる勇気を持てないとしたら、あとは伽藍の重みで自壊していくだけ。
伽藍の世界に制度的に風穴を開けることができなければ、日本社会はいずれ、二割のバザールの住人と八割の伽藍の住人とへと二分化していくことになるばずです。
伽藍の世界のポートフォリオは戦後の高度成長期に最適化されている。
バザール社会ではこの人生設計のポートフォリオをリスク分散型に組み替えていかなくてはならない。

 

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