国民の4人に1人が65歳以上となった日本。 いまや高齢者はのんびりと穏やかに暮らす時代ではなくなっているそうだ。
万引きしたり、暴力をふるったり、女性を追いかけストーカー行為に及んだり。
そんな高齢者の実態をレポートした本を紹介します。
本書の構成
本書は老人の実態を7つのテーマで調査しています。
- 万引き
- ストーカー
- 暴行・DV
- 売春
- ホームレス
- 孤独死
- 生き地獄化する余生
そして、各章の合間に4つのコラムがあります。
それでは、各テーマで書かれているポイントを紹介しましょう。
1.万引き
今や万引き犯の3人に1人が65歳以上らしい。しかも万引きする人は生活苦かというとそんなことも無い。
そして捕まっても年寄りだから許してもらえると思い込んでいる。捕まれば常習者でも「はじめて」といい、認知症のフリをしたりするそうだ。
捕まった人たちが言うのは「生きている実感がない」「生きがいは無い」そんな心の隙間を埋めるために万引きに走る高齢者たち。
2.ストーカー
昨今の60代は心身ともに「若者」の感覚。70~80代の不倫トラブルも増えているそうだ。
夫の一周忌をきっかけに地域の趣味サークルにはいり、そこで知り合った男性につきまとわれ毎日のように郵便受けに手紙がはいるようになった女性。
毎日通うファミレスのウェイトレスにつきまとう男性。
入院している母親を見舞いにきたシングルマザー。となりのベッドに入院していた女性の70歳の夫。その女性を「運命の相手」と思い込み、強引にキスしたり。
ストーカーの9割は男性だそうだ。
やはりこちらに出てくる男性たちも人生の終盤を向かえ、タイムリミットを自覚して思うのが「やり残したのは恋愛だ」ということだそうだ。
この後、コラムにあるが、取材を通じて、著者も3人の高齢者のストーカーにあい大変だったそうだ。
3.暴行・DV
長年の人生経験から分別と節度をわきまえ、下のお手本となるべき存在の高齢者。
今、この定説が崩れているそうだ。
高齢者の暴行検挙は20年間で45倍に。
電車内での携帯通話を注意され、車掌をどなりつける69歳。飲食店のアルバイトをつきとばす76歳。
5歳下の妻をなぐったり蹴ったりする80歳などなど。
その要因は自分が思い描いていた人生とは違うとの不満を他人のせいにするこころの問題だったりする。
「自分はわるくない」と独りよがりの自己弁護を並べて暴力をふるう老人が増えている。
4.売春
結婚詐欺ではない。しかし、お金をもってそうな高齢者男性に近づき、デートのたびに困窮ぶりをアピール。
「頼れるのはあなただけ」と訴え、お金をもらう。体の関係はいっさいなし。ある程度援助させたら姿を消す。
手製のおにぎり1個が3万円にばける手口。預貯金の1割から4分の1で切り上げるのがコツだそうだ。
一方62歳で「ホテトル嬢」デビューしたり、78歳のAV女優もいるそうだ。
このあとのコラムでは、悪女に貢いだ老人たちの話が紹介されています。
5.ホームレス
ホームレスは住所が不定なだけでしっかり仕事をしている。多くの高齢者ホームレスはブランドの物の服を着ているらしい。
そして、生活保護を受けるのは「敗北」だという。いつ誰が今の時代に求められる労働力を提供できなくなるのか。
その日が来たら自分もホームレスになるかもしれないと思わされます。
6.孤立死
孤立死する7割はだそうだ。今の60~70代は高度成長期時代にがむしゃらに働いた世代。プライベートを費やした時間も少ないため、地域とのかかわり、子供とのかかわり薄く、離婚や配偶者の死別がそのまま閉じこもりに繋がっていくようだ。
もうひとつの問題が「男のプライド」。SOSを出さない。他者に弱みを見せないということも孤立死に繋がるらしい。
コラム「シニア婚活パーティ&不倫サイトに集う人々」
6章と7章の間にあるコラムですが、これがすごい。
まずシニア婚活。東北大震災以降シニア婚活は増えているそうだ。ただ、ここでもてる男性は結局お金をもっていること。
高齢者の女性は専業主婦だった方が多く収入が多くない。なので今更女1人も養えないような男はもてないらしい。
また、不倫サイトを活用する方も多いそうだ。高齢化とともに妻に拒絶されたり、妻が施設にはいってしまったりなど色々理由はあるようだ。ただ、いつまでもオンナを追い求める男性は多いとのコラムと著者がインタビューした男性に言われた言葉が秀逸でした。
まとめ
高齢者をとりまく様々な実態を紹介している本書。そうなったのは社会の問題だけではなく、そこまで過ごした人生、心に開いた隙間、やり残したことがあるいう意識。様々だと思う。
あと、しばらくするとここに書かれている年齢に達する自分。こうならないように人生を送りたいと考えさせられた一冊でした。
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