社長や管理者の方が良かれと思ってしていること。
その行動が実際には組織のためには良くなかったりしています。
本書は「識学」と称する意識構造学を通して多くの会社の組織運営の問題を解決してきた独立してコンサルタント業を営む方が著者です。
では、どんな行動が悪くて、どんな行動を取れば良いのか。
結構当たり前に思われているマネジメント手法をひっくり返すような部分もありますが、私自身なるほどと思った点も多く紹介したいと思います。
今回紹介する本はこちら
伸びる会社は「これ」をやらない! | ||||
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組織運営の問題は事実誤認
まず最初に紹介するのが、ビジネスの正しい順番について。
それは、
- お客さまにサービスを提供する
- お客さまから対価をいただく
- 会社が社員に給与を支払う
これがビジネスの正しい順番です。この順番が「事実のしくみ」というものだが、多くの働く人たちは、
- 会社が社員に給与を支払う
- お客さまにサービスを提供する
- お客さまから対価をいただく
の順番だと誤解しているといいます。このような事実誤認をしている人が集まる組織だと必ず組織運営は破綻をきたしてしまいます。本書ではこれ以外にも多くの事実誤認について紹介しています。
ルールで締め付けるのは良くないという誤解
上司からの細かい取り決めがない、できるだけルールがない組織運営だからこそ自発的に動き、目標達成に向けたアイディアを出し合うことで組織は成長していくという誤解があります。
著者はこのような運営について、組織運営の仕組みとしてありえないと断言しています。
それはなぜかというと
組織を運営していくうえで忘れてはいけない前提条件は、同一ルール下に身を置かない状況ではコミュニケーションは成立しないということです。
ルールは大切です。ルールがないと何が正しいかが曖昧になり、部下が迷ってしまいます。当社では、ルールをしっかりと明示したうえで、目標達成のアイデアを求めています。
と述べています。つまり、基準とないルールがない限りコミュニケーションロスが発生し、ルールない中で考えられたアイディアは本人の自己満足に過ぎず、不満や不安が生じるだけと言っています。
社長は自ら現場に入っていくのをやめる
これも良くあることです。
ただ、社長が現場に入って行って果たして良い判断ができるのか?
著者は社長が現場の責任者よりそのことについて多くの時間を取れるかというとそうではないということや、会社規模が大きくなればなるほど、起きている問題を全てタイムリーに発見するのは難しいと述べています。
また、組織として、社長が現場に下りて問題を未然に防ぐ会社では、「起きている問題を上司に報告する機能」が成長しないとも言っています。
そこで、社長の対応としては、
それぞれの責任者が目標達成のために本気で考え、問題があれば的確に報告をする体制を築くのが「社長の仕事」ですよ。すべて自分がやったほうが速いとか、うまくいくというのは、私の過信でしたね。
が正しい対応と述べています。
社長がトップ営業マンであり続けることをやめる
社長が率先垂範のトップ営業でいることは、現場の士気も上がりいいことというのも誤解のようです。
このような考え方の会社は必ず組織の拡大に限界があると。
社長を筆頭としたマネジャーの主な役割は、組織運営です。業績拡大のために組織のルールを決定し、管理していくことを求められているのです。
営業マンがより実績を上げるためのルールをつくり、営業力のある人材をより成長させていくことが大切です。
これが社長の役割と言っています。
部下のモチベーションを気にするのは時間のムダ
今年、私が勤める会社に入社してきた新入社員も言っていました。
「自分のモチベーションをあげるように頑張りたい」と。
しかし、本書では、「部下のモチベーションを気にするのは時間のムダであるばかりか、マイナスの要素まである」と言っています。
ではどうすれば良いのか?
本書では、モチベーションで部下を動かすのではなく、評価で正しい方向へ導くことを上司は求められると述べています。
そして、
部下に「自分は誰から評価を得なければいけない存在か」を正しく認識させ、「評価を得るには何をいつまでにやらないといけないか」というルールを明確に認識させることです。
と、述べており、評価については、
評価を進めるうえで最も大切なのは、「上司が部下に対して何を求めているかを明確に伝えること」です。
では、「何を求めているかが明確に伝わっている」とは、どのような状況をさすのでしょうか。それは、「上司と部下で、100点満点の状態に対する認識が一致している」という状態です。
評価する際に大切なことは、何を基準に評価するのかを、評価する側が事前にしっかりと整理しておくことです。
また、評価については詳しく述べられており、
- 過程・プロセスを評価するのをやめる
- チャレンジする姿勢を評価することをやめる
といったことも言っています。
そしてモチベーションについては、後半の章でも、モチベーション=動機づけ」は社長や上司が与えるものではない、と出てきています。
会社に合わせることができない人材を雇い続けてはいけない
ここでは、良くある誤解として、人には色々価値観があるので、できるだけ本人の意志を尊重したいということをあげています。
この点については、仕事ができる人とは、「評価者の求めることができる人」だからです。と定義しており、メンバーは与えられた機能を果たすことを言っています。
ここでのポイントは評価するのは他者という点が強調されています。そして、
他者評価という事実から目を背け、自己評価という何の価値もない基準でみずからを評価している人は、やはり、成長できないのです。
と述べられています。
新入社員についての指摘も的を得ていると感じました。それは、
- 入社した瞬間に、会社を評価する立場から評価される立場に変わる
- 学びを提供してもらえる立場から、学びを獲得しにいかなければいけない立場に変わる
という2点でそのため早く新入社員の勘違いを早く解いてあげるのが、本当の優しさだそうです。
社長の行動ルールに関する誤解
ここでは、社長の行動のいくつかについて、良くある誤解として指摘をしています。
- 社長は営業・製造の現場に出て行ってこそ。
- 陣頭指揮をとることが何より大事。
- できるだけ社長室を出て、執務室で多くの社員とコミュニケーションをとる
- 腹を割って、とことん付き合ってこその社長
- 社長にとって大事なのは人脈
と言ったことです。
なぜ、社長が社員と同じスペースで一緒に仕事をしてはいけないかというと、
- 色々なことが気になりプロセスに口を出してしまう。
- 間の役職者の機能が停止する
- ルールが変更可能なものという認識ができてしまう。
からだそうです。なので、社長はいてもたってもいられなくても、社長室にこもることを勧めています。
本書のまとめでは、
会社を成長に導くのが社長の最大の仕事。そのために、社長は社内で孤独でなければならない。と述べています。
まとめ
本書は中小企業の社長を想定して書いてありますが、基本的には組織マネジメントの話であり、大企業のマネジメントでも通じる部分が多いと感じた一冊でした。
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