昔、名門と言われた日比谷高校。
度重なる東京都の高校への入試政策にもより、一時期は名門校とは言えない状況となってしまった。
そんな日比谷高校が再び、公立校としては、東大合格者を2年連続40人越えに。
今回紹介するのは、その日比谷高校の校長先生が、学校改革に向けてどんな手を打ったのを紹介する本です。
本書は以下の構成となっています。
序章 V字回復
第1章 落ちた名門校
第2章 校内改革
第3章 日比谷だからこそできること
第4章 日比谷生の勉強方法
終章 新大学入試と求められる人物像
日比谷高校がもっと危機感を感じたのは1993年のことだそうです。
この年に何が起こったかと言うと、なんと日比谷高校からの東大合格者が、わずか1人までに減ったそうです。
以前は200名以上も合格させていた名門校にとっては凋落の限りです。
本書の著者が日比谷高校の校長として就任したのは2012年のこと。
そこで目指したのは「質の高い授業をつくろう」「文武両道をしっかり貫こう」「生徒の進路希望を叶えよう」の3本の柱だったそうです。
昔と違い、今は東大などの名門大学の合格実績をみるとあきらかに中高一貫の私立校が有利。
普通の公立高校としての日比谷高校は3年間で戦わなくてはなりません。
日比谷高校は部活もしっかりやり、高3まで文化祭にも真剣に取り組んだ上で生徒の勉強の力をつけるということを目指すのです。
勉強についても単なる知識を詰め込みではなく、しっかり考える力をつけるというものです。
学校改革のためには、教員にも手を打ちます。授業も教員まかせではなく、人事面談を行い教師にも目標を設定させたり、教員同士でお互いの授業を見学させたり、また、他の学校から優秀だと思われる教師をとったりなど施策を打ちます。
また、日比谷高校は2007年にSSH(スーパーサイエンスハイスクール)にも指定されたのですが、大学の講義をうけさせたり、海外研修をしたりなど、生徒のモチベーションをあげる施策も打ったりします。
その結果、日比谷高校は元々文科系の生徒が多かったのが、今では理系を目指す生徒が増えたそうです。
授業時間についても工夫をいれます。
通常高校の授業は50分×6限授業なのが普通ですが、日比谷高校はあえて45分間に短縮します。
その分7限まで設定し、トータルの学習時間を増やすとともに、45分で短い時間で集中して。時間が必要な授業は45分をくっつけて90分もしくは100分といった長い授業時間を設定できるようにもしています。
もちろん高校に入る前の入試にも手を打っています。
以前は都立高校はすべて同じ入試問題でした。これでは、レベルの高い生徒にとっては差がつきにくくケアレスミスが合否を決めるということが起こっていました。
それが2000年からは独自問題を使うこともできるようになり、日比谷高校は全国に先駆けて採用したそうです。
そして入ってからは授業、定期考査の標準化も図ります。
日比谷高校では、教師によるバラツキを無くすため、授業内容、進度をそろえ、定期考査の問題も共通化することを目指し、2017年度には全教科・科目で実現します。
本書の最後では、日比谷高校で使っている教科書や補助教材も記載さえているので、高校教師の方や受験生のお子さんを持つ家庭にとっても参考となる部分があります。
本書は学校を舞台とした改革の物語ではありますが、通常のビジネスの勧め方でも参考になる部分が大変多い本です。
単に直近の大学合格実績を上げるのを目標にするのではなく、どうしたら生徒のもつ本質的な力を向上させるか。
そして、それが実現すれば、結果的に大学合格実績もあがるという考え方のもとでの学校改革にむけた様々な打ち手を紹介されています。
成果を出す組織作りという視点で普通の企業に勤める方でも、マネジメントという点で大変参考になる本だと感じました。
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