本書は2007年発行なのでもう9年も前のことになる。
TVで放映もされたし知っている方も多い思うが、今回初めて読んで涙なくして読めない本であった。
では、早速紹介しよう。
主人公の千恵さんは23歳の女性
千恵さんが乳がんになったのは23歳のとき。
将来はカラーコーディネータとして独立することを夢みて、イベントコンパニオンのアルバイトをして資金を貯める毎日である。
そんな中IT企業のイベントで太郎さんと知り合いつきあうようになるのであるが、その時には千恵さんは乳がんであることを知っていたのである。
がんとの闘いの中、人生の目標をしっかり持つ千恵さん
乳がん治療では抗がん剤による治療を始める。副作用から現場でのコンパニオンの仕事はあきらめ、内勤となる千恵さん。
副作用で髪の毛が抜けてもよいカツラを探しに行ったり、休日には太郎さんと温泉に出かけたり明るく過ごしていたが、抗がん剤が効かなくなってきて、最終的には左乳房の全摘出手術を選択することになるのである。
手術したのは8月だが、9月にはコンパニオン事務所の仕事も復帰。
通院治療をしながら生活する上だが、ここでひとつ目標を設定するのである。
それは、システムエンジニアになるということ。
自分でシステムエンジニアを養成する会社を見つけてきて2ヶ月間の研修を受けるのだが、これがハード。
朝5時に起きて7時ごろには会社に到着。終わるのが夜9時ごろ。帰ってからも課題をこなさなければならない。途中一度でも遅刻をすると即解雇というもの。
このような会社にはある程度ITの知識のある人間が入るものだが、これまでまったく知識がない千恵さんは2ヶ月間やりとげ見事ある企業にSEとして2月から派遣されることになるのである。
人生は有限であることに気づき、残された時間でやりたい事に向かって全力で立ち向かう大事さを改めて考えさせられた非常に心に残るエピソードであった。
父親の視点
せっかく新しい仕事についたにもかかわらず、千恵さんは1ヶ月たった3月には体調の変化に気づく。
再入院しふたたび、検査と治療の生活。3週間前に定期検査して問題なしといわれていたにも関わらず、転移しておりがんの再発であった。
そして、3月終わりには家族には余命は1ヶ月と伝えられる。
父親の貞士さんは千恵さんがやりたいと思っていることはできるだけかなえてあげようと思い、毎日2時間以上かけての病院通い。
千恵さんが背中が痛いをいえば自分の手で背中をさすってマッサージする貞士さん。
病室で貞士さんが千恵さんの背中をさすっていた。父が娘にしてあげられるただひとつの「手当て」だった。目をつぶったままじっとマッサージを受ける千恵さんが「気持ちいい」とつぶやくと、貞士さんは「ハンドパワーだな」と笑った
一度は銀座でステーキを食べさせたいということで、体調の良いときに連れて行く父親。
9年前に妻を亡くし、娘まで亡くすというのはとてもつらい日々だったと思う。
本書は千恵さんに焦点があてて書かれているが、娘をもつ父親である自分はどうしても父親に感情移入して読んでしまう。
立派な彼氏、太郎さん
交際を申し込んだ時、ガンであることから付き合えないといわれた太郎さん。それでも千恵さんを励まし付き合い始めた太郎さん。その太郎さんが付き合い始めた時に千恵さんに言った言葉
まずは病気を治そう。でも病気ばかりにとらわれていると、楽しい生活を犠牲にしなくちゃいけない。それはやめようね。楽しい生活をするために病気と闘っていくんだから、二人の楽しい時間は大切にしようね。
病気になると病気との闘いが目的化してしまうが、闘うのは楽しい生活のためというのは非常に前向きでよい言葉だと感じた。
余命1ヶ月を宣言されてから千恵さんの願いをかなえてあげようというのがまわりの友人達。そのひとつがウェディングドレスを着て写真を撮るというもの。千恵さんにはあくまで撮影と言ってあるのだが、当日はサプライズで結婚式にしたのである。
この時太郎さんは指輪を準備するのだが、以前千恵さんが欲しいといっていたシャネルの指輪をプレゼントすることにする。
ところが、近くの百貨店や専門店を回っても見つからない。そのとき太郎さんが行なったことがシャネル本社への問い合わせ。
そこでの言葉が
その指輪が手に入るなら日本全国どこでも行くので教えてください。
こんな太郎さんだが、千恵さんが亡くなってからも時々千恵さんの実家に顔を出すそうだ。
そして、千恵さんの父親と二人ビールを酌み交わす。父親も太郎さんが来るのを楽しみにしているそうだ。
まとめ
本書では病気と闘う千恵さんの前向きな姿。そして、支える周りの人々の暖かさをすごく感じた。
千恵さんにとってもガンは突然やってきて訳であるが、自分や周りの人にもいつ、その時が来るのかはわからない。
その時になって後悔しないためにも毎日を大切にしなくてはと感じた一冊であった。
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