著者の佐渡 裕氏は私と同い年。
レナード・バーンスタイン、小澤 征爾らに師事し、2015年9月からオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督に就任するという世界的な指揮者である。
指揮者ってすごい
クラシック初心者の私にとって、
私もオーケストラの演奏というのはどの位指揮者によって違うのか?
また、指揮者が棒を降らないとオーケストラは演奏できないのか?
という疑問を持っていたが、本書を読むとその疑問が解消する。
最初にその点について述べているのであるが、
指揮者の第一の役割とは、譜面と向き合って、そこに作曲家が残した「暗号」を読み解いて、作曲家が意図した音のイメージに近づくことである。
とある。
佐渡氏は子供の頃から譜面を読み、そこからイメージを膨らますのが好きだったそうだ。
その事が演奏家ではなく、指揮者を目指すことになったようである。
音楽に向き合う姿がすごい
譜面を読み取り、一流の演奏家相手にどう自分のイメージを伝えるか?
本書を読むと作曲家への敬意と演奏家達とのコミュニケーションをどうとったか?
について述べてある。
様々なエピソードとともに語るスタイルが非常にわかりやすい。
音楽に対し愛を感じる
本書を読むと感じるのが、音楽に対する佐渡氏の溢れんばかりの愛。
特にベートヴェンの曲に対する表現はクラシックがそれ程わからない私にも、聴いてみたいと思わせる表現を感じる。
また、この本で知ったのだが、ベートヴェンの第9は日本では年末よく聴くが、海外の指揮者は生涯において1回指揮するかどうか?という曲らしい。
佐渡氏はそれを150回以上指揮しているという。
そのひとつが大阪での10,000人で唄う第9の指揮。
このエピソードでは第9に対する愛だけでなく、多くの人々に音楽を愛してもらいたいという気持ちが伝わってくる。
世界で認めらるには
佐渡氏は2005年からウィーンで音楽監督に就任した訳ではあるが、ヨーロッパ文化の代表とも言えるクラシックの世界、それも本場のウィーンで日本人を音楽監督に置くというのはすごいことだろう。
そこまで達する努力、もちろん技術だけでなく外国人とのコミュニケーション、そこまでに達する為の実績づくり、そして、チャンスを逃さない決断力。
自分が好きだった事に対し、真摯に向き合い、そして愛し、努力する姿に感心した本であった。
最後にウィーンに始めて住み始めた頃のエピソードが気に入ったので紹介する。
ツアーで来ていたバーンスタインにウィーンに友達はいるか?いないなら私のウィーンの大親友を紹介するよと言われた佐渡氏。
バーンスタインが連れて行ってくれたのは、ベートヴェンの像の前だったそうだ。
そしてバーンスタインは一言
「彼が昔からの大親友、ルートヴィッヒだ。お前も今日からルートヴィッヒと呼べばいい」
いいですねぇ。
コメント
素敵な一文
楽しめました。