終わった人 by 内館牧子 ~ 定年で終わりたくない人の心理や行動がよくわかるけど笑えないよ【読書記録】

書評

大きなヒットになり、映画化もされた「定年」小説を読みました。
今回読んだのはこちらの本です。

主人公の田代壮介氏は東大を出てメガバンクに入社します。
同期トップでひたすら出世コースを歩みますが、役員寸前で子会社に出向させらて、63歳でそのまま定年を迎えることになります。

この物語は定年を迎えるところから始まります。
このような物語ではありがちですが、田代氏も翌日から行くところする事もありません。

妻は妻で仕事もあり、だんだん夫を疎ましくなることになるのです。

やはりこのような男性はプライドも高く、他のリタイアした人と俺はちょっと違うと思い、中々リタイア組のコミュニティにはいれません。

私も昨年早期退職後、再就職までフリーの状態でした。
慣れるまでは中々平日の昼間にプラプラしたりできないし、逆に何か予定がはいるとうれしいものなのですよね。

田代氏の場合は定年後の期間に、周りからみると結構イタイ行動をとってしまいます。
昔の知り合いがパーティをすることを知り、招待されてもいないのに参加したり、若い女性を口説けるんじゃないかと誘ったり。
当事者は真剣なのですが、涙がでてしまうような活動です。

田代氏の場合はある人との出会いをきっかけに動きだすのですが、その活動に対しイラストレータで義理の弟は「まだ、サラリーマンとして成仏していないんだな」と表現します。

この成仏していないという表現は本書の中でなんども出てきますが、大変共感を得ました。
私の場合は早期退職だったので、やりきった感はありませんでした。
おそらく本当に定年を迎えてもそう感じる方も多いのでしょうね。

またこちらもありがちですが、田代氏は定年後に高校時代の友人達との多くの出会いがあります。
岩手出身の田代氏。現役時代は実家にもほぼ帰らなかった田代氏。
故郷への思いもつのります。
しかしここで印象になる言葉が「思い出には絶対勝てない」ということなのです。

この田代氏がどうなったかは実際に読んでいただくとして、
本書ではサラリーマンとしてがんばってきた人の定年後心理状態がよく描かれており知ることができます。
行動パターンにしても、多くの人がとってしまいがちなものです。

定年後どうなるんだろうと不安感のある方、単にリタイアする気の無い方は
定年を迎える前に本書を読んでみてはいかがでしょうか。

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